事務所のベルが鳴った日。-お客様からいただいた、夏野菜と一枚の手紙のお話-

エクステリアさくらの事務所で、皆様のささやかなお手伝いをしております、木村(仮名)と申します。

わたくしは、プランナーのように美しい図面を描くことも、職人のように力強くハンマーを握ることもございません。事務所のカウンターの内側で、お客様にお茶をお出ししたり、電話の向こうのお声をうかがったり…。そんな風に、会社の日常の風景を、一番近くで見つめているのが、わたくしの仕事です。

夏の陽射しがアスファルトを照らす、ある日の午後でした。 事務所のドアベルが、からん、と涼やかな音を立てたのです。そこに立っていらっしゃったのは、数ヶ月前に、お庭のリフォーム工事を終えられたお客様でした。

今日は、そんな、なんでもない午後に訪れた、心温まる出来事について、少しだけお話をさせていただけますでしょうか。


その日、お客様は、大きな紙袋を大切そうに抱えていらっしゃいました。

「こんにちは、木村さん。これ、うちの庭で採れたのよ。見て、こんなにたくさん!不格好だけど、おいしいから、事務所の皆さんで食べてちょうだい」

そう言って奥様が差し出してくださった紙袋の中には、赤や緑のつややかな光を放つ、採れたての夏野菜がたっぷりと入っていました。瑞々しいトマトに、立派なきゅうり、そして丸々としたナス。どれも、太陽の香りがするようでした。

「まあ、こんなに素晴らしいものを…!ありがとうございます」

わたくしがそうお伝えすると、奥様は本当に嬉しそうに、こうお話ししてくださいました。

「あの花壇、覚えてる?プランナーの高橋(仮名)さんに、『初心者の私でも失敗しないように』ってお願いして、少しだけ高く作ってもらったでしょう?おかげで、水やりも楽で、腰も痛くならなくて。こんなに立派な野菜ができて、主人も私も、びっくりしてるのよ」


そして、奥様は「それから…」と、ハンドバッグから一枚の小さな封筒を、少し照れたように差し出されました。

「これは、職人の鈴木(仮名)さんたちに、どうしても渡したくて…。工事が終わった時、ちゃんとお礼を言えなかったから」

わたくしは、その封筒をありがたくお預かりしました。 お客様がお帰りになった後、そっと中を拝見すると、一枚の便箋に、丁寧な文字でこう綴られておりました。

『エクステリアさくらの職人の皆様へ

暑い中、毎日黙々と作業をしてくださり、本当にありがとうございました。 休憩中に、うちの息子が興味津々で話しかけても、嫌な顔一つせず、道具のことを優しく教えてくれたこと、息子は今でも『職人さん、かっこよかった!』と自慢しています。 おかげさまで、殺風景だった庭は、家族の宝物になりました。 皆様の誠実なお仕事ぶりに、心から感謝しております。

本当に、ありがとうございました』

わたくしは、その手紙を読みながら、このトマトを嬉しそうに眺めるであろう高橋の顔や、この手紙を見せたらきっと「…おう」とだけ短く言って、照れ臭そうに笑うであろう鈴木の顔を思い浮かべ、なんだか自分のことのように、胸がいっぱいになりました。


わたくしたちの仕事は、工事が完了し、お引き渡しをすれば、それで終わり、というわけではございません。

完成したお庭が、その後、お客様の暮らしの中でどのように息づき、どんな笑顔を育み、どんな物語を紡いでいくのか。 その幸せのお裾分けを、時々こうしていただけることこそが、わたくしたち全員にとって、何よりの喜びであり、明日への活力となるのです。

いただいた瑞々しいトマトは、その日の夕方、事務所にいたスタッフみんなで、おいしく、おいしくいただきました。 少しだけお塩を振っただけのシンプルなトマトは、太陽の味がして、最高に贅沢なごちそうでした。

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